石英ガラスの特性や用途について解説|ガラスの豆知識

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2024.09.18

ガラスの種類

精密産業を支える「緻密な石英ガラス加工」とは?

現代社会を支える石英ガラス

私たちの身の回りにあるスマートフォン、パソコン、インターネット。これら現代社会になくてはならない高度なテクノロジーを陰ながら支えているのが、「石英ガラス」と呼ばれる素材です。透明で、一見すると普通のガラスと変わらないように見える石英ガラスですが、実は極めて高い純度と優れた光学特性を持つ、まさに “産業の米” とも言うべき存在なのです。
特に、電子機器の心臓部である半導体の製造において、石英ガラスは欠かせない役割を担っています。その理由は、過酷な環境下でも変質しにくい石英ガラスの特性にあります。

この記事では、知られざる石英ガラスの世界を紹介しながら、その特性や用途について解説していきます。

石英ガラスとは

石英ガラスは、その名の通り石英(水晶)を主成分とするガラスです。といっても、窓ガラスや瓶に使われているソーダ石灰ガラスとは、製法も性質も大きく異なります。石英ガラスは、高純度の二酸化ケイ素(SiO2)を溶融・冷却して製造されます。不純物が極めて少ないため、優れた耐熱性や光透過性など、他のガラスにはない特性を持つことが特徴です。

石英ガラスには、製造方法によって大きく分けて2つの種類があります。

合成石英ガラス

高純度のケイ素化合物ガスを高温で反応させて合成する、非常に純度の高い石英ガラスです。半導体製造装置の部材など、特に高い純度が求められる用途に用いられます。

溶融石英ガラス

天然の水晶や高純度の石英砂を溶融して作られます。合成石英ガラスに比べて純度はわずかに劣りますが、大型製品の製造も可能なため、幅広い用途に使用されます。

このように、石英ガラスは製造方法によって純度や特性が微妙に異なるため、用途に合わせて最適な種類を選択することが重要となります。

石英ガラス・合成石英ガラスの特性

石英ガラス・合成石英ガラスは、他のガラス素材にはない数々の優れた特性を持ち合わせており、それが様々な分野での応用を可能にしています。ここでは、特に重要な特性について詳しく解説していきます。

1. 優れた耐熱性

一般的なソーダ石灰ガラス(青板ガラス)が約600℃なのに対し、石英ガラスは、約1000℃、合成石英は、約1025℃と極めて高い耐熱性を誇ります。
この特性により、高温環境下での使用に適しており、半導体製造工程の高温処理や、高温炉の窓材などにも利用されています。
また、合成石英ガラスはその透明度、耐熱性の高さから内燃機関の可視化燃焼実験にも活用されております。

2. 低い熱膨張率

熱膨張率とは、温度変化によって物質が膨張・収縮する度合いを表す指標です。石英ガラスは、この熱膨張率が非常に低いため、急激な温度変化を加えても割れにくいという特徴があります。そのため、熱衝撃に強い素材として、高温プロセスにおける部材や、温度変化の激しい環境で使用される光学部品などに適しています。

3. 高い光透過率

石英ガラス・合成石英ガラスは、紫外線から赤外線までの幅広い波長領域において、高い光透過率を示します。特に、紫外線領域での透過率は他のガラスと比較して非常に高く、半導体製造工程で用いられる露光装置のレンズや、紫外線ランプなどに利用されています。

4. 化学的安定性

石英ガラス・合成石英ガラスは、酸やアルカリなどの化学物質に対して極めて安定しており、腐食しにくいという特性があります。そのため、化学薬品に接触する環境で使用される実験器具や反応容器、バイオ研究、半導体製造工程で使用される薬品処理装置などに最適です。

5. 電気絶縁性

石英ガラス・合成石英ガラスは、電気を通しにくい絶縁体としての性質も持ち合わせています。この特性は、電気回路の絶縁部品や、高電圧環境で使用される部品などに利用されています。

このように石英ガラス・合成石英ガラスは多くの優れた特性を兼ね備えており、それが、現代の様々な産業分野において必要不可欠な素材として利用される理由となっているのです。

半導体製造における石英ガラス・合成石英ガラス

現代社会において、スマートフォン、パソコン、自動車など、あらゆる電子機器に搭載され、必要不可欠な存在となっている半導体。その製造プロセスにおいて、石英ガラス・合成石英ガラスは様々な場面で重要な役割を担っています。半導体製造プロセスは、数百もの工程を経て、シリコンウェハー上に微細な電子回路を形成していく、非常に精密な作業です。その過程では、高温処理、薬品処理、紫外線照射など、過酷な環境に材料をさらす工程が数多く存在します。

石英ガラス・合成石英ガラスは、前述したように、優れた耐熱性、化学的安定性、光透過性などを兼ね備えているため、このような過酷な環境下でも安定した性能を発揮できる素材として、半導体製造装置や検査装置、照明器具等、様々な部品に用いられています。

石英ガラスが使用される半導体製造の工程例

シリコンウェハーの製造

シリコンインゴットを溶融状態から引き上げる際に用いるるつぼや、薄くスライスする際に使用するワイヤーソーのガイド部分などに、高純度の石英ガラスが用いられています。

熱処理工程

ウェハー上に形成した薄膜を高温で処理する拡散炉や、不純物を注入するイオン注入装置などには、高い耐熱性と純度を持つ石英ガラス製の部品が使用されています。

洗浄工程

ウェハー表面の不純物を除去する洗浄工程では、薬品耐性に優れた石英ガラス製の容器や配管が使用されています。

露光工程

ウェハー上に回路パターンを転写する露光装置では、紫外線を透過させるレンズやマスクなどに、高い光透過率を持つ石英ガラスが用いられています。

このように、石英ガラスは半導体製造のほぼ全ての工程で使用されており、高集積化、高性能化が進む半導体製造を支えています。まさに「縁の下の力持ち」のような存在といえるでしょう。

その他の用途

石英ガラス・合成石英ガラスは、その優れた特性から、半導体製造以外にも様々な分野で活躍しています。ここでは、その多岐にわたる用途の一部をご紹介します。

1. 光ファイバー

インターネットや通信ネットワークの高速化を支える光ファイバー。情報を伝える光信号を伝送するコア部分には、超高純度の石英ガラス・合成石英ガラスが使用されています。石英ガラスは光信号の損失が少ないため、長距離通信を可能にする光ファイバーに最適な素材です。

2. 光学レンズ・プリズム

カメラや顕微鏡、望遠鏡などに使用される光学レンズやプリズムにも、石英ガラス・合成石英ガラスが利用されています。石英ガラス・合成石英ガラスは、可視光線だけでなく、紫外線や赤外線に対しても高い透過率を持つため、高精度な光学性能が求められる用途に最適です。

3. 化学プラント

薬品に対して優れた耐性を持ち、高温にも耐えうる石英ガラス・合成石英ガラスは、化学プラントの反応容器や配管などに使用されています。腐食性が高い薬品や高温の反応液を扱う際にも、安全かつ安定した運用を可能にします。

4. 照明器具

ハロゲンランプやメタルハライドランプなどの高輝度照明には、高温に耐えうる石英ガラス・合成石英ガラスが使用されています。これらのランプは、高温で発光するため、熱に強い石英ガラス・合成石英ガラスが不可欠です。

5. 研究・実験分野

石英ガラス・合成石英ガラスは耐熱性や化学的安定性に優れているため、エンジンの内燃機関に用いるシリンダーでの高温化による実験や医療機関等で薬品を使用した実験・研究において、正確な結果を得るために役立ちます。

6. レーザー加工機

合成石英ガラスは、紫外域、赤外域で対応する様々なグレードがある為、ハイパワーなレーザーを使用してた加工機等にも採用されています。

このように、石英ガラス・合成石英ガラスは私たちの生活を支える様々な製品に活用されています。その用途は、今後もさらに広がっていく可能性を秘めています。

おわりに

一見、目立たない存在ながらも、高度な技術を支え、私たちの生活を豊かにする石英ガラス。その優れた特性と幅広い用途、そして進化を続ける技術開発について、ご理解いただけたでしょうか。

情報化社会の進展は、今後ますます加速していくことが予想されます。それに伴い、石英ガラスへの要求もさらに高度化していくでしょう。

 

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